なんだかんだで、まだいます

アメリカで人類学を勉強するプログラムから早々に離脱した後日談

こういう人たちの中にいます

明日から1週間、学期の真ん中の一週間休み。休みがこんなに嬉しく思えたのは、人生でなかなか他に経験がない。唯一思い浮かぶのは、某機構で働き始めた最初の1週目から最後の週まで全ての週末(約100回)。(←no offense)

今日はちょうど学科の飲み会があったので心置きなく参加してきた。10時頃から人々がバーのカラオケを歌い始め、そのアメリカらしい楽しみ方に圧倒される。ゆうに50人はいると思われるバー全体の群衆に対して、どこからともなく客がステージによじ登って歌い始める。60代のオジさんによる哀愁漂うカントリーロックから始まり、なかなかうまいと思わせつつ、人が交代するたびにだんだんひどくなっていく。最後は目も当てられへん。それでもバー全体が思い思いに体を揺らして、歌い終わりには笑顔で拍手する。

カラオケが始まる前は普通にバーでビールを飲みながら友達と話す会。どんな友達がいるかを書きましょう。

ヒゲぼうぼうで長髪のインド人。お父さんがシク教徒とかなんとかで、シク教徒は体毛を切らない、みたいな話をどこかで聞いた。お母さんは別のカーストやから、カースト間の結婚で生まれた子供である彼は自動的に不可触民らしい。酒が好きで、一緒に飲むといつも最後まで、「もう一杯いけるよな?」と粘ってる。デリーで学生しているときは、一気飲みをprofessionalにやってたって自分で言ってる。確かに何かと一気飲みを誘ってくる。抑揚のないインド訛り特有の英語を話すし、おそらくこれもインド訛りの特徴であんまり口を大きく開けずに話す。でも一方で、ごもごもっと喋るのは単に個人的なクセの問題な気もする。なんとなく柔らかい話し方が特徴的で、目の輝きも奥行きがあってなかなか読み取りにくい。ものすごい数の本を読んできてる典型的なインテリ。学部では化学を専攻して自然科学にも明るいし、社会科学についても誰よりも本を読んでるみたいに思う。四六時中タバコを吸っとる。歌を歌ったり踊ったりするのが好きなんやろうなという感じがするけど、今日のカラオケは歌いたい曲が入ってなかったみたい。残念。

お父さんがメキシコ人というヒスパニック系のアメリカ人。精神的に不安定な(疾患のある?)子供の学校の先生をしていたとかで、心理セラピーのことよく知ってる。特徴的なアクセントで英語を話すけど、あれはどこのアクセントなんやろうか。文の節ごとに抑揚を上げるのが特徴で、聞き手がついて来てるかどうかを常に確認しながら話してるっていう印象を与える(アメリカ英語は一般的にそう)。人の話を聞きながら、いつも繊細に表情を動かしてる。多くの場合は、微笑んでる。表情だけでなくて、誰かが話してるのに合わせて腕を動かしてジェスチャーを作り、一人の聞き手として話の内容に合わせた演劇的な表現を行ってる。だれもそのジェスチャーにはコメントしないけど、みんなが無意識に聞き手として自分の心をそれに連動させて、それによって話し手の語りに対しての共感を深めてる。一対一で会話するときは、「沈黙する瞬間があったら、意図的に沈黙を利用して相手に話させるよ」と言ってた。劇的にコミュニケーションがうまい一人の女性。

お祖父さんが日本人やというミシガン(?)出身のアメリカ人。初めて話したときは、こちらが日本人やということそれ自体には全く触れず、アメリカでの食文化みたいな文脈でさりげなくお祖父さんが日本人と知らせてきた。どんな会話になっても、相手について何かの断定的な言明をすることは絶対にない。が、こちらが何か踏み込んだ会話を振ると、積極的に乗ってくる。乗ってくるが、こちらが振った以上の深さを超えては決して入ってこない。こちらについて一定の興味は持ってるやろう。持っていながら、その興味をああやって完全にコントロールしているのは、いったいどんな自己管理能力なんや。授業で人が発言してるときは、いつも首を上下に振って共感を示してる。自分が発言するときも、ふと彼女の方を見るとこちらをまっすぐ見据えて首を上下に振ってるのが見えて、安心する。

他にも、「イラン人にとって日本は、進むべき未来の国じゃ」というイラン人や、赤ちゃんから逃げようとするイカつい黒人の男の子や、いろいろおる。今日は(上手い〜下手までの)カラオケを聞きながら妙に幸福な気分でした。カウンセラーともいい話ができたし。明日から1週間休みやし。明日締め切りの課題もほとんど終わっているし。休みの間に、やっとニューヨークを見に行きます。おかげさまで、まだここにいます。